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The time is gone, the song is over, thought I'd something more to say.

中国東北の旅 満州国の記憶を訪ねて①

中国では今日からメーデーに合わせた連休が始まり、東北部の吉林省長春に旅行に行きました。ここはかつて満州国の首都・新京が設置された場所で、今も当時の建築物がたくさん残っています。

満州国は「国」と名乗っているものの、実際には日本の傀儡国家です。日本が中国東北部を占領した際、国際連盟や諸外国からの批判をかわすために建国されました。当時ありったけの最先端技術を投入して街作りが進められた一方、日本の敗戦により満州国はわずか13年で消滅します。その後、日本に引き揚げようとした人たちがソ連軍の攻撃で虐殺され、親とはぐれて日本に帰れなかった「中国残留孤児」を生み出した悲劇の地でもあります。

日本と中国の歴史を語る上で、中国東北部――旧満州の歴史を抜きにはできません。そんなこともあって私は中国にいる間、必ず一度は行きたいと思っていました。この連休中の航空券を調べたところ、よその観光地に向かう便は軒並みビックリする価格に値上がりしていた一方、長春便はそうでもなかったので、これ幸いと「満州国の記憶を訪ねる旅」を企画したのです。

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ラストエンペラー

1987年公開の映画「ラストエンペラー」を見ました。清朝最後の皇帝で、後に満州国の皇帝にもなった愛新覚羅溥儀の一生を描いた作品です。以前にも一度見たことがあるのですが、まもなく始まる労働節の連休を使って、かつて満州国の首都が設置された吉林省・長春に行こうと考えていることもあり、予習を兼ねて再度鑑賞することにしました。

ラストエンペラー(伊・中・英・仏・米合作/1987年公開)

以下、映画のネタバレがあります。

私が初めて作品を見たのは中国語を学び始めて間もない高校生の頃です。中国語の勉強になるかしら……と見始めたら、登場人物がみんな英語を話すのでズッコケたのを覚えています。インターネットで検索すると違和感を持った人は少なくないようです。やっぱりそうだよねえ、あの西太后が英語を話しているんだもの。まあ「ベンハー」では古代ローマ人が英語を話し、「アントニーとクレオパトラ」では古代エジプト人が英語を話し、「サウンド・オブ・ミュージック」ではオーストリアの家族が英語を話すんだもの。映画の世界ではみんな英語が話せるというわけですね。

今回は映画の主人公、愛新覚羅溥儀のことを少し勉強してから鑑賞しました。なので、私のような素人が見ても史実と異なる点が多数あることに気付きました。結構大胆な創作も盛り込まれていて、溥儀本人が見たらどう思っただろうと感じてしまうシーンもありました。

作品の上映時間は2時間43分と十分長いのですが、1人の人間の一生を見せるには短すぎます。幼少期のうちは「外の世界を見てみたいんだな」などと読み取ることができます。けれど家庭教師のジョンストンが登場したくらいの青年期以降は溥儀のキャラクターが安定しません。皇帝という地位に執着する権力者なのか、それとも皇帝なんてどうでもいいから自由になりたいアウトローなのか。もちろん溥儀本人にはいろんな思いがあるわけですが、それが描き切れていないのです。ある程度、史実を知ってから見るならいいのですが、初めて見た人は溥儀という人物が掴みづらかったり、展開が早いと感じたりするのではないかと思いました。

溥儀だけではありません。坂本龍一さんが扮する甘粕正彦もあれよあれよという間に自殺しちゃって「結局何者?」という感想だけが残ってしまいます。パイロット風の(ちょっと胡散臭い)女性の登場(※川島芳子のこと)も突然すぎて、しばらく「え、アンタ誰?」ってなっちゃいました。あとは文化大革命のシーンで政治犯収容所の所長が紅衛兵につるし上げられた際、溥儀が「この人は良い人なんだよ」とかばうのも「え、そんなに親密な仲だったっけ?」と視聴者が置いてけぼりになります。もちろん、そうなるに至った背景を想像はするんですが、描かれ方が薄いんですよね。

ああだこうだと言ってしまいましたが、映像美は見事でした。作中に登場する紫禁城の情景は圧巻ですし、場内で生活する人々の衣装は豪華でした。中国政府の全面協力のもと、1日に5万人が訪れるという紫禁城を数週間借り切って撮影が行われたよし。CGでない撮影はいつまで経っても古さを感じさせない壮大さがあります。

 

さようなら大好きな蘭州牛肉麺

このブログに何度も書いている、行きつけの蘭州牛肉麺の店が突然閉店してから約1か月が経ちました。そろそろ営業再開しているのではないかと思い、見に行ってみました。

店は閉店したままでした。店内は荒れてしまい、床のタイルなんて割れてへこんでいます。1か月前に見に来たときもこんな状況でした。

この店、以前にも2回突然閉店したことがあります。1回目は新型コロナウイルスが感染拡大していた時期で、このときは北京市内のあらゆる店が営業停止していました。2回目は店が改装工事したときです。このときは予告もなく突然閉店したので「もう食べられないのか」と大変残念に思ったことを覚えています。結局、1か月後に新装開店したんですけど。

フェアウェルは突然に
職場の近くに行きつけの蘭州牛肉麺の店があります。このブログでもよく紹介していますし、この前の投稿でも最近は蘭州牛肉麺よりも牛肉涼拌麺にハマッていると書いたところでした。今日なんて昼前から「牛肉涼拌麺」が食べたくてしようがなくなり、ワクワクしながら店に向かいました。労働節の連休も挟んでいたので久しぶりです(とは言っても1週間程度ですが)。店の前まで来ると、何だか様子がおかしい。とても静かなのです。もしや、労働節のお休みが続いているのかしらん?中をのぞくと……こ、これはどうしたというのでしょう。これ...

それほど、私はここの蘭州牛肉麺が好きなんです。ほかにも“牛肉凉拌面”(牛肉冷やしまぜそば)という冷やし中華みたいなのも好きだし、あと丼物やチャーハンもおいしい。路地裏の目立たない店ですが、料理の味はそこらのチェーンを断然上回っています。

この店は昼時になるといつも混んでいました。だから予告なしに閉店したときも「おそらく閉店することはない」「きっと改装工事だろう」と思うことができたのです。けれど今日訪ねると、その可能性はなくなったことが分かりました。

ガラス戸に“出租”(貸し出します)と貼り紙がされています。日本風に言うと「テナント募集中」でしょうか。次の入居テナントを探し始めたということは、もうあの蘭州牛肉麺の店が戻ってくることはないということです。あんなに人気だった店がなぜ突然閉店したんでしょう。

店は年配の夫婦と、その息子夫婦が切り盛りしていました。息子夫婦は相次いで息子さんと娘さんも生まれたようで、息子さんが店内で元気よく走り回る姿をよく見かけました。どうしちゃったのかなあ。お父さんはいつもイスラム教徒の帽子をかぶっていたので、多分「回族」だったんだと思います。すると出身は甘粛省や青海省のほうで、そちらに帰っちゃったのかしら。それとも移転したのかな?いずれにしても知る術はありません。

この店に初めて来たのは2019年、東京から出張で北京に来たときです。2022年に北京に赴任してから再度訪ねると店がまだ残っていて感動したものです。

街なかPCR検査デビュー
今日の昼食は滞在しているホテル近くにある蘭州牛肉麺の店に行った。数年前の北京出張の際にも来たことのある店で、3年半ぶりの再訪。入店すると店主夫婦とみられる2人が奥で食事をしていた。テーブルに着くと若いお兄ちゃんが注文を取りに来てくれたので蘭州牛肉麺をオーダー。ここの蘭州牛肉麺はおいしかったんだよなあ。しっかりした味が付いていて。注文を取ったお兄ちゃんが作ってくれるようだ。厨房に入っていくと中からパンッパンッと生地を伸ばしている音が聞こえ、5分ほどで持ってきてくれた。記憶が正しければ、前に来たとき...

北京生活も3年目になりますが、ここには本当によく来ました。何を食べようか迷ったらここに来ていたくらいです。ここで食べたいろんな味は忘れられないだろうなあ。これはショックでしばらく立ち直れないかもしれません。

タッチ決済で地下鉄乗車

今日は日曜日ですが中国は平日扱い。労働節の大型連休のための振替出勤日です。地下鉄の駅は(当たり前ですけど)いつもと同じ混み具合。家を出るまでは「日曜日なのに仕事かあ」という気分ですが、電車に乗るとまるで平日だったかのように錯覚してきます。

地下鉄の改札口にこんなバナースタンドが立っていました。乗車券を買わなくとも、クレジットカードのタッチ決済で地下鉄に乗れるという案内です。去年9月に導入されたシステムで、当時私もVISAカードで試したのを覚えています。何度やってもエラーになってダメでしたけど。

このバナースタンドが英語で書かれているところを見るに一番の対象は海外からの旅行客でしょうね。これまでの北京地下鉄は自動券売機で乗車券を購入するのさえ不便でした。一部の駅の自動券売機は外国人が使えない仕様*1になっていて、必ず有人の窓口に行く必要があったからです。窓口に行ったって駅員は中国語しか話そうとしないので*2言語ができない旅行客にとって地下鉄に乗るのは大変ハードルが高かったのです。

とは言え、中国の街中にはまだまだクレジットカードが使えない場面が多すぎます。地下鉄がタッチ決済で乗れるようになっても、バスやタクシーでは結局使えないままです。今回の取り組みが中国国内でもクレジットカードの利用がしやすくなる動きのひとつであるよう、切に願うばかりです。

追記)

試しにスマートフォンに紐付けたクレジットカードのタッチ決済機能(Googleウォレット)で試してみると、改札を通ることが出来ました。それもあっという間!こりゃあ便利です。これまでAlipayのQRコードを使って乗降車していましたが、今度からはこちらに乗り換えてみようかな。

References
*1一部の駅の自動券売機では乗車券を購入しようとすると「身分証番号」の入力を求められます。身分証というのは中国人が持っているマイナンバーカードみたいなもので、私たち外国人には発効されていません。つまり事実上、中国人しか乗車券が購入できない仕様になっています。
*2なぜ中国の人は相手が中国語が話せないと分かっても頑なに中国語を話そうとするんでしょうね。日本に一時帰国した際に羽田空港で英語を使って一生懸命案内をしているボランティアの方を見る度に本当に立派だなあと頭が下がります。

あなたの名前が別の意味に?

先日、同僚から在ウクライナ中国大使の名前は日本漢字でどう書くか聞かれました。大使の名前は中国の漢字(簡体字)で書くと“马升琨”。確かにこれを日本漢字にしようとすると少し困ったことになります。というのも“”は「馬」で、“”は「琨」ですが、“”という漢字は「升」と「昇」の2通りありえるのです。

これが以前も記事に書いた「複数の漢字を1つに統一してしまった」問題です。

昨日は穀雨
最近雨が続いています。先週の金曜日に降って、今日も雨。北京は雨が少ない地域です。最後に傘を差したのがいつだったか思い出せないくらい。調べると、北京の年間降水量は約600mmで、東京の約1500mmや大阪の約1700mmに比べると半分以下です。大陸性高気圧、北京の場合は「シベリア高気圧」に覆われているので雨が少ないそうです。昨日は二十四節気の1つ「穀雨」でした。穀物の成長を助ける雨という意味です。この頃には田畑の用意が整い、これに合わせて雨が降るんだそうです。こうして本当に雨が降るんだから、昔の人は賢いなあとつ...

もともと伝統的な中国語で「升」と「昇」は別の漢字として扱われます。現代の日本語でも区別して扱われ、例えば「升」はマスという意味で使われ、「昇」はのぼるという意味で使われます。けれど中国(中華人民共和国)では今から70年前に文字改革をした際、より簡単に漢字を書くことを目的に「升」と「昇」は“発音が同じだから”という理由で「升」に統一してしまったのです。だから日本語で「昇級」と書くところを中国では“升级”と書きますし、「上昇」も“上升”と書きます。

なので“马升琨”という名前を日本漢字で書く際には「馬升琨」と「馬昇琨」の両方がありえます。こういうときは……本人に聞くしかありません。けれどそれはできないので、想像力を膨らませて「どういう意味をもって名前を付けられたか」と考えるしかほかないのです。

マスの意味がある「升」と、のぼるという意味がある「昇」。だったら「昇」のほうが名前に相応しいのではないか……そう思えてしまいますが、いざ漢和辞典を引くと「升」という漢字にも「のぼる」「栄える」「みのる」という意味があり、名前に使えそうです。そうなると、もうお手上げ(^^;)。

最終的には台湾や香港といった、今でも伝統的な漢字(繁体字)を使う地域のメディアがどちらの漢字を採用しているか調べて参考にします。Yahoo!奇摩(台湾のYahoo!)でフレーズ検索*1すると「馬升琨」は2,370件で、「馬昇琨」は1件でした。こうなると答えは明らかで、日本漢字でも「馬升琨」と書いたほうが良さそうです。

こういう問題は日本人にも起きます。例えば「龍」「竜」は中国の漢字だとどちらも“”です。すると「龍二」という名前を中国の漢字にすると“龙二”になりますが、日本の漢字に再度戻そうとしたら「龍二」と「竜二」の2通りありえます。この場合「龍」「竜」どちらも「りゅう」=ドラゴンという意味なので、まあ、どちらもありえるでしょう。

けれど漢字の意味が変わってしまう場合は厄介です。例えば「優斗」という名前は中国の漢字にすると“优斗”になります。ただ中国では日本漢字「闘」にも“”が使われます。例えば「戦闘」は“战斗”、「闘争」は“斗争”と書きます。だから「優斗」という名前は中国の漢字にすると“优斗”になりますが、これを日本漢字に戻す際に「優闘」にされてしまう“可能性”もあるのです。

ここまで考えて中国の漢字を日本の漢字(ないし伝統的な漢字)に直してあげられればいいのですが、残念ながらそうでないことが多いのも事実です。70年前の文字改革によって特に漢字の本場・中国では伝統的な漢字に造詣がある人が極端に少なくなっています。もしかしたら日本人以上に漢字の知識が失われつつあるといっても過言ではないかもしれません。

References
*1ダブルクォーテーション「”」を使った検索方法のことです。例えば“東京都”と検索すると、必ず「東京都」というフレーズが正確に記載されたページがヒットし、「東京都庁」や「東京都立公園」などは検索結果に表示されません。
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